平成22年8月17日

8月 野外研修  栃木県栃木市 栃木市斎場・栃木県宇都宮市 悠久の丘

 

はじめに

 今年度の野外研修は、八木澤会長が携わった栃木県にある栃木市の栃木市斎場と宇都宮市の悠久の丘の2つの火葬場を見学することとした。栃木市斎場は、1979年(昭和54)に竣工、悠久の丘は2009年(平成21)から供用開始している。

この2つの火葬場は、供用年数や炉の数などの火葬場の規模において対照的である。ただし、両施設に共通しているのは、単なる遺体処理施設ではなく、生きている者にとっては、生活空間の中での故人との別れの場であり、故人にとっては新たな旅たちの場としての空間を目指した火葬場であると考える。今回の野外研修では、この2つの火葬場の見学を通して、そうした生活空間の中に密着した別れの場としての火葬場について学んだ。

 

1.八木澤会長との関わり

両施設と八木澤会長の関わりは、次の通りである。(事務局作成案内文より抜粋)

栃木市斎場(竣工1979年 昭和54)

 1978年(昭和53)建設業者選定委員会に日本環境センターから参加。建築の設計管理を担当。4機の火葬場(現在は6基)、炉前ホールを2つに分割、告別・見送り・拾骨を一体化し会葬者の儀式の個別化をはかる。炉前ホールの壁面に大家石を使うなど、その地域での葬送の場として雰囲気作りを目指した。

 

悠久の丘(供用開始2009年 平成21)

 2005年(平成17)宇都宮市新斎場PFI事業者審査委員会委員として参画。火葬場の専門家として実質審議にあたる。建設地の視察も、審議委員会で現地を訪れた。森の中での火葬場の位置づけ、大規模施設でありながら、温かい送りの場を作り出すシステムが評価できた。

 

2.栃木市 栃木市斎場

 栃木市斎場は、1979年(昭和54)に竣工された火葬場であり、ポーチを挟んで待合棟と告別・火葬・拾骨を行う火葬棟が、コンパクトに配置されている。(写真1、2)待合棟は、和室(写真3)3部屋、ロビー、売店から構成されている。全体的に天井が高く、また自然光が多く差し込む。和室は、それぞれ、ふすまで仕切られているため、遺族たちが落ち着いて、火葬を待つことができるようになっている。使用料金は、栃木市民の場合、和室1室3,000円(他の市民の場合は6,000円)、ロビーは無料で使用できる。待合棟と火葬棟の間に設置されているポーチは、天候に影響されないよう屋根がついており、霊柩車とバスまたは、乗用車が入る大きさになっている。

火葬棟は、2つに区切られており、それぞれ火葬炉が3基ずつ設置されている。竣工当初、火葬炉は4機であったが、2000年(平成13)に2基が増設された。天井が高く、窓が多く設置されている。自然光が多く差しこんでいるため、全体的に明るく落ち着いた雰囲気のスペースとなっている。火葬炉の周囲は、地元の大谷石がはめ込まれていた。ポーチから入り口に入るとまず、炉前のスペースで、告別が行われる。この際、棺の前には焼香台が設置され、遺族による焼香や故人との最後のお別れをする。その後、火葬が行われ、拾骨が行われるようになっている。(写真4、5)

火葬料金は、市民の場合は、無料で利用することができる。他地域の市民の場合は、大人(12歳以上)18,000円、12歳未満の子供は、13,000円となっている。詳細は、以下のHPを参照されたい。

1件あたりの火葬時間は、2時間としている。内訳は、火葬1時間、冷却30分、拾骨30分という時間配分になっている。この間、火葬スペースは、葬家の専用スペースとなる。よって、周囲を気にせず、落ち着いて故人を送り出せるようになっているのが、この火葬場の特徴である。また、告別と拾骨を行うために、炉前の空間が広く取られており、火葬場特有の圧迫感をあまり感じないのが印象的だった。

 

栃木市斎場 http://www.town.mibu.tochigi.jp/benri/jumin08.html

 

3.宇都宮市 悠久の丘

 悠久の丘は、2009年(平成21)3月に供用が開始された施設で、火葬棟と式場棟の2つから構成されている。民間の資金やノウハウを活用し公共サービスを提供するというPFIの手法が取り入れられた施設である。よって、長期的に、整備、運営から提供されるサービスなどのすべての面において、民間の企業に業務委託されている。

 火葬棟は、火葬炉16基、緑のお別れ室4室、水のお別れ室4室、お別れ室4室、待合室16室、キッズルーム、ベビールーム1室がある。式場棟は、2室(最大150名まで収容)、式場控え室2室、通夜控え室2室という構成になっている。概観から建物内部にいたるまで、地元の大谷石や竹がふんだんに使用されており、地域の特色を打ち出した施設となっている。また、徹底して、葬家ごとに独立した空間・時間が持てるように配慮されている。これは、ゆっくりと落ち着いた空間で告別・火葬を行えるお別れ室や入退場の廊下の分離に現れている。

火葬棟を見学してみると余計な案内板が一切見当たらない。唯一、何時から、どこで、誰の火葬が行われるのかというのは、入り口に設置されているモニター表示でみられるようになっている。これは、人的サービスに重点を置いたためで、廊下などに案内を行う職員を多く配置し、案内のほか、あらゆる葬家の要望にすぐ応えられる体制をとっている。炉裏もエレベターが設置されているなど、充実しており、火葬業務に従事する人たちにとって動きやすく、かつ無駄なく動けるように工夫がされている。

宇都宮市と壬生町の住民の火葬料金は無料、他の地域の住民の場合は、大人(13歳以上)63,800円、13歳未満の子供47,850円となっている。火葬料金や施設の利用方法及び概観などについては、悠久の丘のHPに詳しく掲載されているので、そこを参照されたい。

 

宇都宮市 悠久の丘 http://www.u-yukyunooka.jp/

 

おわりに

 近年、葬儀を行わず火葬を行う直葬が、都市部では一般的になっている。そのような現実に向き合いながらも、火葬場は、単なる遺体処理施設ではなく、この世から人を送り出すための場所としてどうあるべきかという模索を続けていかなければならないと考える。こうした中で、栃木市斎場と悠久の丘の斎場は、葬家が落ち着いて故人を送り出すということにこだわった火葬場であると位置づけられるのではないだろうか。

 今回の見学にあたり、栃木市斎場、宇都宮悠久の丘の関係者の方々、有限会社一二三の阿島武志代表取締役に心より感謝申し上げます。

 

【日 程】

平成22年8月17日(火)

第1部 栃木市斎場 見学

9:00 JR・東武 栃木駅集合 →9:30 栃木市斎場見学→

10:30 見学終了後、JR宇都宮駅へ移動

 

第2部 宇都宮悠久の丘 見学

11:30 JR宇都宮駅西口集合(1部からの参加者と合流)→12:00昼食

→13:30 宇都宮悠久の丘見学 → 15:00 見学終了

→15:30 JR宇都宮駅西口にて解散

以 上

 

写真1 栃木市斎場 公道側より

写真2 栃木市斎場 ポーチと火葬棟部分

 

写真3 栃木市斎場 待合棟 和室

 

写真4 栃木市斎場 火葬棟内部−1

 

写真4 栃木市斎場 火葬棟内部−2