日本葬送文化学会

[ご案内]

10月研修旅行
長野善光寺の旅です。

会  費: \14,650 予定(税込み)
宿泊代1泊2食、飲み物別(\13,650)、 善光寺資料館(\500)、山門拝観料(\500)
交通費・会費以外の飲食費・自由行動費用各自で負担をお願いします

10/15 (木)
11:30 JR 長野駅出発→12:00 昼食→13:30〜15:30 善光寺資料館、山門見学
16:00 善光寺赤門寺永代宿坊 兄部坊 入坊、入坊後翌朝の善光寺本堂における供養・祈願の申し込み
その後、会食、入浴

10/16 (金)
6:30 宿坊出発−お数珠頂戴−戒壇めぐり−お朝事参拝−前日受付の団体法要
 大本願にて尼公上人拝悦 法話−宝物拝観→8:30 朝食 その後解散 自由行動 帰宅

自由行動:信濃美術館、東山魁夷館、湯福神社 等
精算は各自行ってください。学会からは補助金などは出ません。
もしご家族などもご参加されるなら必ず申込用紙に各自の情報を記載して下さい。
日  時: 2009/10/15〜10/16 二日間
集合場所: JR長野駅新幹線改札口前
集合時間: 11:30 (東京駅より「あさま513号」ですと長野駅に11:16着予定です
出席者数: 14名
本文&写真:早稲田大学大学院 人間科学研究科博士後期課程 須永真紀氏 (常任理事)


はじめに

今年度の野外研修は、10月15日から16日に、長野県長野市で行われた。長野市の概要は、人口380,883人(平成21年4月現在)、148,121世帯(平成21年4月現在)面積は、738.51平方キロメールである。平成20年度の死亡者数は、3,446人であり、出世者数は、3,379名であった。
長野県の北部と南部では、葬儀儀礼に差異があるものの、ほぼ全域で骨葬の葬儀が行われており、長野市も 骨葬が一般的である。また、近年、都市部で行われている火葬場へすぐに搬送する直葬は、殆ど見られないものの、家族葬や葬斎場を利用した葬儀の施行は、一般的になってきているという。上述したことから、今回の研修では、長野市の大峰斎場及び有限会社日野岩様の葬儀場見学(想樹の杜)を見学し、現在、長野市で行われている一般的な葬儀の傾向を考察することを目的とした。
なお、参加者は、八木澤会長、天野会長代行をはじめ総勢14名だった。またスケジュールは、以下の通りであった。

【日 程】
10月15日(木)
JR長野駅 新幹線改札前 集合 → 昼食 そば処北野屋本店 → 自由行動
→ 長野市大峰斎場(火葬場)研修 → 善光寺赤門寺永代宿坊 兄部坊 入坊 入坊後翌朝の善光寺本堂に
於ける供養・祈願の申込受付 →その後、会食 入浴 自由行動

10月16日(金)
善光寺にてお数珠頂戴 、戒壇めぐり、大本願にて尼公上人拝悦 法話 など → 朝食(兄部坊)→ 善光寺資料館・山門見学(ガイド付)→ 湯福神社 → 有限会社日野岩様の葬儀場見学(想樹の杜)
→ 昼食(善光寺大門 竹風堂知音亭) → 昼食後、解散 自由行動

1長野市大峰斎場(火葬場)について
 長野市は、大峰火葬場、松代火葬場、裾花火葬場の3つの火葬場を所有しており、これらは、生活部市民課葬斎場対策室によって管理・運営が行われている。また、長野市の葬斎場では、葬具、祭壇、霊柩車の貸し出しも合わせて実施し、飾りつけも葬斎場の職員が行うことから、葬儀会社を利用しなくても、葬儀ができるようなシステムになっている。これは、利用の規約を見てみると、「葬儀会社を通して予約をしなくてはならない」という条件からもうかがえる。よって、市民あるいは長野市以外の地域の人がこれらの斎場を利用したい場合には、市役所の窓口にいって申し込めばできるシステムになっている。ただし、全く葬儀会社が介入しない葬儀がどれくらいの割合であるのかということと、葬儀会社を通して利用を申し込む場合もあると推測されるので、実際、どのように、この場所で葬儀が行われているのかなどということについては、さらに詳しい検証が必要となることを留意しなければならない。なお、火葬料金、葬具の代金等については、下記に掲載した長野市のHPについて参照されたい。

次に、大峰斎場について述べることとする。大峰斎場は、善光寺のほうから車で15分から20分くらい離れた山の中にあり、長野市が運営している火葬場の中では、一番、規模が大きい。大峰斎場の竣工は、昭和44年10月であり、火葬炉は、4基(灯油・ロストル式)を備えている。火葬取り扱い時間は、午前8時半から午後5時までとなっており、友引・祝日・土日も稼動しているという。職員数は、業務委託職員4名が在中しているという。なお、利用状況は、表1の通りであり、長野市の市民の利用が圧倒的である傾向が読み取れる。ただし、平成15年、16年にみられるように、市民以外の火葬が3桁にいった年もあった。

  表1 大峰葬斎場利用状況 
長野市生活部市民課葬斎場対策室「平成21年度葬儀業務の概要」より作成 

年 度

市 民

市民以外

小 計

平成15年

1,547

109

1,656

平成16年

1,800

102

1,902

平成17年

1,769

57

1,826

平成18年

1,736

62

1,798

平成19年

1,870

65

1,935

平成20年

1,915

69

1,984


 大峰斎場を見学したときは、4基ある内の1基が修理中だったため、3基が稼動していた。火葬場の配置は、入口から入ったら正面に4基が設置されている状態で、炉の前でじっくりお別れをするというような空間はない。また、拾骨室は、火葬炉の脇に仕切りで区切られている空間で行われ、左右に2箇所ある。よって、拾骨は、ご遺族たちが入り混じって行うようなことはないようになっているものの、メインの出入り口が一箇所しかない。そのため、場合によっては、相当、火葬場を利用するご遺族たちが入り混じるような印象を持った。また、火葬塔の脇にある控え室の建物は、ご遺族たちが固まって座ることはできても、個別に仕切られた空間がないため、ゆっくりするというような雰囲気のものではなかった。
火葬場の構造により、単に遺体処理的なだけの場所にならないよう、また、ご遺族たちが入り混じるようなことにならないようにするため、火葬場では、予約時間等で、対応していることだった。大峰斎場の火葬予約時間は、9時、9時半 11時、11時半、13時、13時半、15時、15時半、17時、17時半となっている。1回の受付は、2基ずつとなっていることから、少なくとも1回の火葬に、2家族が鉢合わせしてしまう可能性があるものの、入口で待つなどして、若干時間をずらして、火葬を行うようにするなど、できる範囲で工夫して運営しているとのことだった。また、この火葬場を利用している葬儀会社もこれらのことを考慮しつつ、火葬に立ち会うのだろうと推測された。
長野市における人々の葬儀観について考慮する必要があるものの、上述のことから、長野市の火葬場では、火葬場でゆっくり故人とお別れするという環境ではなく、 ご葬儀を施行するための準備としての火葬というような場所であり、火葬よりもご葬儀のほうに重点が置かれていることを重視した結果、このような火葬場ができたのではないかと考える。
 

参考:長野市 HP

2湯福神社について
湯福神社は、善光寺守護神である善光寺七社の1つであり、戸隠神社の守り神である戸隠三所権現の1社と称されている。境内の中の樹齢1000年以上のケヤキや銀杏の木々が見事な神社であった。ここを代々お守りしている神主さんの案内により、神社内を歩き、説明を聞いた後、御祓いを受けた。境内の中にあるケヤキを治療して復活させたお話や、新式の葬儀は少ないというお話を聞いた。また、例大祭のときには、善光寺から参拝を受けていることから、善光寺にとっても、貴重な神社だということがよくわかり、仏教と神道が、互いに尊重しあっていることがよくわかった。なお、拝殿の左手前には、善光寺の開祖の本田善光の墓所とされる箇所があった。
なお、「全国善光寺会」のHPによると、「ユブク」(上代は清音)の語源は、往古より「イブキ(風)」の神として崇められてきたところにあり、「気吹き(イフキ)」が「井福(イフク)」「湯福(ユフク)」と発音が変化したものと考えられるという。また、湯福神社の宮司の話によると、川中島の戦いのときに、「井福大明神」の名称がついた鰐口が持ち去られ、佐渡島に現存しているとのことだった。

参考HP:全国善光寺会


3有限会社日野岩様の想樹の杜(そうじゅのもり)について

 有限会社日野岩は、明治18年に善光寺で創業して以来、現在に至るまで、長野市にて葬儀会社を営んでいる老舗の葬儀会社である。今回の研修旅行では、新しく作られた日野岩葬送会館 想樹の杜(そうじゅのもり)を見学した。近年、長野市でも家族葬で葬儀を施行する人たちが増えてきていることから、規模の小さい葬儀から、規模の大きい葬儀に全てに対応できる葬儀会館が必要となってきているようだ。また、長野市の葬儀は、 上述したように、骨葬であることから、祭壇も 骨葬に応じたものとなっていたのが印象的だった。
 こうした長野市の葬儀の傾向を踏まえつつ、作られたのが、想樹の杜の会館である。1階は、最大100名まで収容できる式場が設置されている。ここで、パーテーションを仕切るなど、会葬者の人数に応じて、式場の設定ができるようになっているという。なお、長野市の葬儀では、一般的に、お通夜は30人〜40人、葬儀には100人から150人程度の会葬者があるという。よって、この葬斎場もその人数にあわせた設定になっているだろうと思われた。
2階には、ロービー、控え室兼お通夜会場、お斎会場が設置されている。お斎会場は、最大100名まで収容することができ、式場の規模と同じ規模となっている。また、この会館の特徴の1つに、全面バリアフリーということがあげられており、会葬者が安心して心行くまで故人とお別れできるようにという配慮がなされているという。今後、葬儀の多様化、会葬者の高齢化等を踏まえて考えたときに、それに充分対応できる葬斎場だと思われる。
参考HP:有限会社日野岩

おわりに

 長野市では、市が葬祭業務を行っており、葬具、祭壇、霊柩車、火葬場と、葬儀に必要なものをそろえたいときは、市に問い合わせれば対応できるようになっているシステムになっている。料金は、民間よりも安である。一方、民間では、葬儀料金もさることながら、公営にはないサービスの質や葬儀の品質が求められており、住民からしてみれば、葬儀を施行するに当たり、自分の目的に合ったものを選択しやすいシステムになっていると思われた。近年の経済情勢等により、こうした行政が提供するサービスが多く用されてきている一方で、民間の葬儀会社も葬儀料金を低価格に設定しつつ、質が高いサービスを提供していかなくてはならないという現状があり、いかに、地元の意向に沿った葬儀を施行していけばいいのかということを模索している状態だと推測される。これは、長野市に限らず、全国の葬儀会社も、同様かもしれないが、長野市のように、葬具・霊柩車の貸し出し等も行っている行政機関があるところでは、なおさら、その模索は大変だろうと思われた。
こうした状況の中、葬儀会社が提供できる空間や葬儀のサービスを考えていく上で、今回、想樹の杜の見学ができたのは有意義であったのではないだろうか。
葬儀については、すでに述べたように、 骨葬であり、家族葬は一般的になってきているものの、都会にみられるような火葬場へ直行する直葬は、身寄りがないといったような特殊な事例だけであり、限り殆どないという。このことは、密葬=家族葬という言葉が上手い具合に浸透していることに対し、直葬は、地域によって、全くイメージが悪いまま取り残されていることを示していると考える。よって、この点に、直葬に対する人々の認識の地域差、が見出せるといえよう。別の見方をすれば、直葬をする必要がないから、しないだけかもしれないので、今後、その点を踏まえつつ、長野市の葬儀の傾向とともに、直葬の動向を見ていきたいと思う。
以 上

謝 辞
 今回の葬送文化学会の研修にあたり、非常にご尽力くださった有限会社日野岩の塚田篤雄代表取締役、また、大峰斎場を案内してくださった長野市生活部市民課に心より感謝申し上げます。そして、今回の野外研修の幹事であった東京にっそう・天野勲会長代行、有限会社一二三・阿島武志事務局長、非常に有意義な研修旅行となったことに感謝を申し上げるとともに、数々のご配慮に心より感謝いたします

copyright © 2009 須永真紀
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