日本葬送文化学会                 7月定例会(野外研修・見学)

                          日時:2004年7月22日13:00〜

                              於:かわさき南部斎苑・臨海斎場

 首都圏・新設火葬場の見学

 

川崎市営「かわさき南部斎苑(川崎市川崎区夜光3−2−7)」と港区、品川区、目黒区、大田区、世田谷区共

同設置施設「臨海斎場(東京都大田区東海1−3−1)」の両施設の見学をさせて頂きました。

テーマ「 首都圏・新設火葬場の見学 」 (参加者約30名)

かわさき南部斎苑(川崎市川崎区夜光3−2−7)

平成16年6月より供用が開始された「かわさき南部斎苑」は川崎市営の火葬場で、敷地面積9,312.37u、延床面積9,910.96u、鉄筋コンクリート造一部鉄骨鉄筋コンクリート造、地下1階地上2階建て。火葬炉12基、告別室と収骨室各3室、休憩室(50人用)9室、斎場(式場)4室、霊安室1室(遺体保冷庫12庫)などを備えている。駐車場は116台(地下79台、地上37台)。平成16年6月の1か月間で200件の火葬を行なった。

 コの字型の建物と噴水によって、車寄せやエントランスを囲むような配置に設計され、外部の騒音などを遮断し、静粛な空間を創り出そうとしている。

◆設置までの経緯

 これまで川崎市の火葬場は、市内高津区の川崎市立葬斎場(現・かわさき北部斎苑)1カ所のみで、平成15年の火葬件数が7,085件とほぼ受け入れ可能数の限界に達していた。こうしたことから、平成4年に市議会で2カ所目の火葬場整備を求める請願が採択され、平成8年に用地取得、9年には基本計画、基本設計、環境調査を実施し、12年の都市計画決定を経て、平成14年6月着工、15年度末に竣工した。周囲は臨海地域の工業地帯で、市道沿いにあり、最も近い民家まで600メートルの距離があるが、付近の企業や工場などからも建設反対運動があり、合意までに約3年半を費やした。ちなみに同市の条例では、火葬場から最も近い人家までの距離を200メートル以上と定めている。

 総投資額は約84億1,900万円、このうち土地代は約21億7,500万円だった。

◆設備

 12基ある火葬炉のうち2基は長さ2メートル20センチの棺までが入る大型炉を用意。その他も長さ2メートルまで対応する(幅は78センチ、高さ52センチまで)。燃料は都市ガスを使用するが、災害時の対策として6基は軽油用のバーナーに取り替えが可能になっており、軽油1万5,000リットルが常時備蓄されている。火葬場入口から告別ホール、告別室3室、見送り・炉前ホール、収骨ホール、収骨室3室などを、建物1階の向かって左側に配置した。

 斎場(式場)部門は、2階に斎場1(200人用)、1階に斎場2(100人用)、3(50人用)、4(50人用)の合計4室。斎場1と2はA・Bに2分割が可能で、全体として1日最大6件が施行できる。各式場では通夜・告別式、火葬の開始時間が、それぞれ以下のように決められている。

斎場名

通夜開始時間

告別式開始時間

火葬開始時間

第1斎場A(A・B)

午後7時〜

正   

  午後1時

第1斎場B

午後7時〜

午前10時

午前11時15分

第2斎場A(A・B)

午後6時〜

午前11時

  午後0時15分

第2斎場B

午後6時〜

正   

  午後1時15分

第3斎場

午後6時〜

午前10時

  午前11時

第4斎場

午後6時〜

午前11時

  正  

(川崎市役所ホームページより引用)

 各斎場とも受付用ロビーとお清めコーナー、遺族僧侶控室を備えるほか、各式場の祭壇天井部分には木製の格子がはめ込まれて、和風のイメージを醸しだしている。霊安室を利用できるのは、斎場利用者のみで、火葬のみの利用者が保冷庫を使用することはできない。

 地下駐車場のエレベータ乗り口、火葬場・斎場棟への入口、斎場前、休憩室前、炉前、告別室・収骨室前には、どの喪家がどこを使用するのかを示すデジタル掲示板を設置した。パソコンを使って、掲示作業の効率化が図られている。

◆運営

 平成15年9月に地方自治法の一部が改正され、「公の施設」の管理方法が「管理委託制度」から「指定管理者制度」に移行した。これを受けて南部斎苑では、事務部門は財団法人川崎市保健衛生事業団を管理者に指定。火葬業務は民間に委託し、平成15年度まで火葬場があわせて行なっていた霊柩運送の業務は廃止された。現在火葬業務に携わっているのは約10人で、炉メーカーの富士建設工業から職員が派遣されている。

 火葬などの予約は、電話による予約システムへの申し込みによって行なわれている。事前に登録された葬祭業者を通じて、午前9時から午後3時までの各時間帯(正午を除く)4件までの予約を受け付ける。市内居住者は7日先まで、市外居住者は3日先までの予約が可能で、予約受付時間は午前6時から翌日午前2時まで。

 開場時間は、火葬場が午前9時から午後5時、斎場(式場)は午前9時から午後10時(それ以降の遺族の仮眠も可能)。また、休場日は火葬場が1月1日と友引日、斎場(式場)は通夜があるため休みは1月1日のみである。

◆使用料

種 別 

金    額

 付記

 

市内居住者

市外居住者

 

火葬料1体

3,000

30,000

12歳以上

 

2,000

20,000

12歳未満

 

1,000

10,000

死産児

 

遺体保管料
1体 1日

1,000

3,000

 

休憩室使用料1回

4,000

12,000

 50人用 


場使用料1回

かわ

き南部斎苑

斎場

 AB斎場 一括使用

80,000

240,000

 200人用

通夜及び告別式で1回です。

 

 AB斎場 区分使用

40,000

120,000

 100人用

斎場

 AB斎場 一括使用

40,000

120,000

 100人用

 AB斎場 区分使用

20,000

60,000

 50人用

 

第3斎場
第4斎場

20,000

60,000

 50人用

 

(川崎市役所ホームページより引用)

◆副葬品の制限品目

かわさき南部斎苑では、有害物質類の発生や火葬時の障害を防ぐため、故人の愛用品などを極力棺に入れないよう、副葬品の自粛について利用者に協力を要請している。

制限される品目は以下のとおり。

品目

考えられる障害

プラスチック製品
化学繊維製品

ゴルフクラブ、テニスラケット、人形、釣り竿、おもちゃ、化繊の洋服など
特にカーボン製品

有害物質類の発生
急激な燃焼による温度上昇
酸素不足による不完全燃焼
火葬時間の延長
集塵装置の不具合
焼骨の損傷

ガラス製品
貴金属製品

ビン類、めがね、宝石、金、プラチナなど

焼骨、台車への焼付
炉内での爆発(密閉の場合)
貴金属の焼失にともなう誤解の発生

燃えにくいもの

ドライアイス、衣類、厚い書籍、寝具、生花、果物など

火葬時間の延長
酸素不足による不完全燃焼

危険物

スプレー、ガスライター、電池、ペースメーカーなど

炉内での爆発
ペースメーカー装着のケースは事前にお知らせください。

紙類
    図書など

集塵装置の目詰まり

(川崎市役所ホームページより引用)

A臨海斎場(大田区東海1−3−1)

 東京都港区・品川区・目黒区・大田区・世田谷区の5区が共同で設置・運営する火葬場「臨海斎場」は平成16年1月15日にオープンした。敷地面積22,496.74u、延床面積7,599.69u、鉄筋コンクリート造一部鉄骨造、長方形をした地上2階建てである。台車式の火葬炉8基、告別ホール、収骨室、待合室8室(54席)9室、葬儀式場4式場(70席)、遺族控室(10畳と4畳)4室、会葬者控室(64席)4室、霊安室1室(遺体保冷庫16庫)などを備え、駐車場は259台分を確保する。

 月平均約270件の火葬を行なっており、友引日も利用できるため1日平均では9件、これまでの1日あたりの最大件数は16件である。式場はほぼ毎日、4式場すべてがうまる状態である。ただ、待合室を炉数と同じ8室用意したものの、式場利用者は収骨までの時間を会葬者控室などで過ごすことが多く、8つある待合室がすべてふさがることはほとんどない。

 その立地から、全体の利用者のうち大田区は65%、品川区が20%と圧倒的で、ほかの3区からの利用はそれぞれ3%前後。とくに世田谷区からは移動に40分ほどかかり、火葬も収骨まで2時間を要するため、短時間ですむ民間施設が使われているとみられる。

◆設置までの経緯

 平成9年、建設に向けた基本調査を実施し、翌10年に建設規模などを5区で合意し、さらに11年には事業主体として臨海部広域斎場組合が設立された。平成12年には都市計画決定、事業認可を取得し、13年用地取得の後、14年に工事を開始して15年に竣工した。 総事業費は約93億円、このうち土地代は約43億円。

◆設備

 全体が長方形の建物に向かって、左側が火葬施設、中央に1階は収骨室や霊安室、面会室(火葬のみで葬儀を行なわない遺族のためのお別れの場所として使用)など、2階に待合室、さらに右側は1階が式場、2階に会葬者控室と遺族等控室が配置されている。斎場では、電力や水を節約するため、自然採光を多く採り入れ、太陽光・風力を斎場内外の照明に利用、トイレの水は雨水を濾過して使用している。

 火葬炉に入る棺の大きさは長さ210センチ、幅65センチ、高さ50センチだが、8基ある火葬炉のうち1基は長さ2メートル30センチの棺までが入る大型炉とした。

 2つずつがとなり合う葬儀式場は、間仕切りをはずして2つを1室として使うこともできる。それぞれの式場の横には通路と返礼品を置くスペースとして備えつけのテーブルが用意されている。式場内には放送設備もあり、利用時間は午後2時から翌日の午後1時まで。4式場のうち2つは午前11時までに出棺、ほかの2式場は午後0時までの出棺が求められる。

 式場に対応してそれぞれ4室ある会葬者控室と遺族等控室。会葬者控室は、通夜振る舞いと初七日法要や会食にも使えるよう、使用時間は午後5時から翌日の午後4時までに設定。風呂・シャワー、室内トイレを備えた遺族等控室の使用時間は午後4時から翌日の午後3時まで。10畳と4畳の和室を襖で仕切り、片方を僧侶の控室として使用できる。5名程度の仮眠も可能。

 また、9室が並ぶ待合室のバックヤードには、業者用のエレベータまで通路が設けられ、またミニキッチンなども用意されていて便宜が図られている。

 その他に更衣室やロッカーなども設けられている。なお、臨海斎場では、花環と看板の設置はできない。

◆運営

 火葬と式場の設置・管理運営を行なっているのは、5区で組織する臨海部広域斎場組合。受付など運営業務や施設管理は、ビル管理会社の東京ビジネスサービスに、火葬業務は炉メーカーの宮本工業所に、それぞれ委託している。

 そのほか、斎場では骨壺を販売しているが(料金は火葬料に含まれる)、その骨壺の制作は障害者団体に委託、屋外の清掃業務や2階売店の業務も社会福祉法人やNPO法人に委託して、とくに障害者の雇用拡大が図られている。

◆使用料

1.火葬施設

区   分

組織区住民
(港区、品川区、目黒区、
大田区、世田谷区)

組織区外住民
(左の5区以外)

火葬料

12歳以上

23,000円

32,000円

12歳未満

14,000円

20,000円

胎   児

 6,000円

10,000円

12,000円

16,000円

人体の一部

 5,000円

 8,000円

分   骨

 2,000円

 3,000円

待 合 室

20,000円

30,000円

 

2.葬儀施設

区   分

組織区住民
(港区、品川区、目黒区、
大田区、世田谷区)

組織区外住民
(左の5区以外)

 56,000円

 84,000円

 14,000円

 21,000円

 30,000円

 45,000円

合   計

100,000円

150,000円

 

3.柩保管施設

単    位

組織区住民
(港区、品川区、目黒区、
大田区、世田谷区)

組織区外住民
(左の5区以外)

24時間ごと(24時間に満たない場合は24時間になります。)

3,000円

5,000円

(臨海斎場ホームページより引用)

休館日:火葬施設:1月1日〜3日

     葬儀施設:12月31日午後〜1月3日午前

   他に、施設管理に伴う臨時休館日。

◆副葬品の制限品目

以下のものが、棺の中に入れられないものとしてあげられている。

公害(ばい煙、有毒ガス、悪臭)の発生源となるもの

 ビニール製品(ハンドバック、靴、玩具等)

 化学合成繊維製品(衣類、寝具、敷物等)

 発泡スチロール製品(枕、緩衝材、パッキング等)

 その他のもので発生源となるもの(CD、ゴルフボール等)

可燃物であっても燃焼の妨げとなる燃えにくいもの

 果物(スイカ、メロンなど大きな果物類)

 書籍(辞書、アルバムなど厚みのある書籍類)

 大型繊維製品(衣類の納めすぎ、大きなぬいぐるみ等)

火葬炉設備の故障の原因となるもの

 スプレー缶、電池、金属製品

 カーボン製品等(つりざお、ゴルフクラブ、ラケット等)

その他危険なもの

 ガラス製品(めがね、ビン、食器等)

 その他、燃焼に伴い危険なもの

 *ペースメーカー等体内装置医療品は、炉内で爆発しご遺体を損傷するおそれがあるので、必ず事前に申し出ること。

『〜 かわさき南部斎苑見学の様子 〜』

    

   

 

     

    かわさき南部斎苑併設式場にて              芦川了一様より説明

 

     

         炉前にて                   臨海斎場へ向けて再出発

                                 

             

『〜 臨海斎場見学の様子 〜』