日本葬送文化学会 5月定例会 |
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日時:2004年5月15日18:30〜
於:東京文化会館 4F 中会議室1 |
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『住民運動の忘れ物 』〜感情と話し合いへの技術〜 | |
講師 滋賀大学経済学部教授 奥村 哲史 氏(おくむら てつし)
〔 講師略歴 〕 1990年3月 早稲田大学大学院商学研究科博士後期課程単位取得退学 1990年4月 滋賀大学経済学部専任講師をへて92年助教授 1994年9月より、ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院客員研究員及びフェロー 1998年6月〜7月 メルボルン大学客員研究員 1999年3月〜4月 フランスESSEC経営大学客員研究員 1999年9月より、 同 IRENE(欧州交渉教育研究所)国際評議員 2003年4月より、 現職 〔 主な業績〕 「交渉力のプロフェッショナル:MBAで教える理論と実践」(翻訳)ダイヤモンド社 2003 「都市問題と交渉の技術」(「歴史と建築のあいだ」浅香勝輔教授退任記念刊行委員会編)古今書院 2001 「組織のイメージと理論」(共著)創成社 2001 「現代の経営組織論」(共著)学文社 1994 「「話し合い」の技術 ー交渉と紛争解決のデザインー 」(翻訳)白桃書房 2002 その他多数 〔 担当講義科目 〕 ネゴシエーションと意思決定論、経営戦略論、組織行動論、組織革新論 〔 現在の研究領域 〕 紛争解決、ネゴシエーションと意思決定過程、異文化間交渉、環境交渉、コンフリクト管理、リスク判断の心理過程、 組織秩序形式における交渉機能
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奥村先生は当会会長の浅香勝輔氏と師弟関係になる。 「交渉学」という経済学の中での分野は、最新の学問として先進諸国においてたいへん重要視されているものであ る。 1、「紛争」の日常化 Dispute と話し合い(labor dispure , patent dispute , 欠陥住宅、隣人、雇用、他) 対立回避の社会的な仕組み 諸環境の変化とクレーム 住民運動(ドンキホーテ、国立) *紛争というとそのイメージからは国家間の争いごとというような印象が強いが、今では日常的にこの言葉を使用 している。労使紛争、特許、欠陥住宅、隣人、雇用・・・・。Disputeの意訳的な翻訳から「話し合い」というふうに おきかえることも可能。このような観点から、より日常的な場面で、この対立構造を見ることが出来る。 対立回避の社会的な仕組み・・・背景環境として社会・経済・文化があり、そこで「使用できる手続き」を中心に 対処される。その結果として、コストと便益が派生する。 このような環境が変化することで、常にクレームが発生する。 クレーム処理については、たとえば住民運動などの場合、その問題が「放置」されてきたことへのフラストレーシ ョンから、行政権の行使をする際にも多大な時間・経費の浪費とエネルギーを双方に負担させることになる。 ディスカウントショップ「ドンキ・ホーテ」の24時間営業について派生した住宅地での問題では、営業についての 法的な許可を完了しているにもかかわらず、騒音などその地域環境的な問題から住民運動が起こり、その対 応方法が「交渉」を考える上でも例として挙げられる。 クレームからクリエイト型への企業対応によりこれを克服できる可能性も多いということを示した。 2、話し合いの技術 discuss , debate , argue , dispute の使い分け。 技術の蓄積(韓国) 構造的な対立 コストと機械(成田空港) 解決方式(権力、権利、利益) ルールの性質 *話し合いは「技術」であるという概念から、この技術の蓄積がなされていないといけない。 日本は風土的・文化的な所産から個から個への交渉、たとえば「子が親に対して交渉する」というような感覚が 派生しにくい背景環境が長く続いている。またこれは国家間の外交施策についても同様な面が見受けられる。 米国はこのような点から日本よりも約20年くらい進んでいるのではないか。 成田空港の地元住民との交渉ごとを検証すると、そこではいろいろな機会の喪失や多大なコストを浪費して、い まなお完全な完成・整備を果たしていない状況がある。 解決方法の観点として、権力(パワー)・権利(法的根拠に基づいた主張)・利益(便益、利益の供与)これらの組 み合わせにおいて、想定できるものはあらかじめ対応しておくことが必要である。 その中心となるものが、利益(interest)、それを権利(right)が取り巻き、その包括的な受け皿として権力(power) がある。この権力というのは、個から集団、あるいは行政・国家による圧力をも含む。 「話し合いの技術」(訳書・白桃書房)に例としてある炭鉱労働者のストライキ対策などがその典型。 3、解決の質・・交渉解決の質という観点から次の4つの基準要素を考えることが必要 4つの規準 取引コスト → 時間、費用、エネルギーに関しては低い方が良い。 結果への満足度 → けれども、解決結果の満足度は重視するべき。 関係への影響 → 交渉解決の持続性を検証しておく必要も大切。 再発可能性 → 部分的な解決で収束させる場合やそれが拡大解釈・観点をもとに大問題として再発させる可能 性も検証しておく必要がある。 例 : 黒人の子供がある学校に入れないことが、その学校と親との問題にするのか、あるいは人種差別という問題 に発展させて紛争拡大させるのがいいのかどうか。(ブラウン判決【米国】) 手続き、技術、動機、資源 『コスト』 4、反射的抵抗と参画 弱者からエゴへ ルール設定のための交渉(平等、衡平、必要、公正) ボストンの道路更新 共同体の変容と短絡的利己行動 マーケティングとヴィジョン 『話し合い』の技術と自己責任 *交渉時において「弱者」のクレームが個人的な「エゴ」に変貌することも多く見られる。 交渉の前提となるルール設定が必要でこれも交渉によって取り決めることが肝要。 そのルールの前提は、平等・衡平(こうへい)・必要・公正が条件。これは手続きとその結果においても重視され るべき観点である。 とくに住民運動における共同体は常に変容しているので、いわゆる「野放し状態」は最悪の結果を招く恐れが ある。
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質疑応答: 日本型の交渉技術において? 裁判やマスコミ報道などの影響に準じて行うことが多いが、第三者的な「入れ知恵」については、これを排除する方が良 いのではないか。 意思決定という場合の意「思」と意「志」の違いについて? 「志」については、感情的と直結した感覚があるが、「思」については、そこで一旦、考え方を進める上での「情報処理・ 整理」がなされているものと考えることができる。 養老猛司著「バカの壁」(新潮新書)ではこれを数式化して、y=axとしてyを「行動」、xを情報として、aを自分自身のインプッ トとしている。 葬祭業界における火葬場建設や斎場建設などの反対運動への交渉は? 潜在的な死への忌避観が大きく影響しているが、それが固有の「文化」であるという観点から、これを懐柔していく方向が 必要ではないか。 ジャーナリズムが大きな基準を形成してしまう恐れについて? 現代のメディアはその機能において可否両面を持ち合わせているので、これらのパワーは無視できない。進化する時代 の大きな現象問題であると思う。
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事務局報告
テーマ 『 共同研究書『火葬後拾骨の東西』刊行について 主旨・・趣意書からの抜粋 民俗というすぐれて経験的な事象については、私たちの学会も配慮を示す必要がある。地方都市や村里 を訪ね歩くと、葬送の習俗の地域的特徴・違い・連なりなどが判明し、編みだせるのではないか。 今回の刊行企画では、内容の拡散化・漠然化を防ぐため、各研究参加者が記述していただく焦点をミク ロにし、記述の方法の例や見本も詳しく備え、また、調査対象地域も本会の仲間のうちの気の合う人と 楽しく同行できるよう配慮したうえ、研究対象も各自が興味を持ってもらえそうな鮮烈なテーマを選 んだ。 私たち学会も、まだ葬送文化研究会であった時期に、出版物によって研究成果を刊行したことはある。 平成5年(1993年)に古今書院から発行した『葬送文化論』である。 本会も学会を名乗った以上、学会誌の発行はもちろん、共同研究を社会に発表する義務がある。さい わい、古くから浅香の知己でもある、日本経済評論社の編集者である谷口京延氏より、火葬および火葬 場に関する書物を同じ型・同じぐらいの頁数で十冊ほど「火葬叢書」としてシリーズものとして刊行し たいという誘いがあった。私の会長任期2年間のうちに年1冊ずつ、計2冊の書物を発行しようという 考えにたどりついた。 取りあえず、今回はその分担区域と担当者の希望・割り当てをすることにしたいと思う。 このような新会長の企画提案を踏まえて、理事のみならず、会員各位におかれましても、ご意見・ご 提案・ご協力を仰ぐために拡大理事会ということで、是非ご参集をお願いいたします。 なお、あわせて本年度後半期の運営活動計画もつめていきたいと思いますので、よろしくお願いいたし ます。 以上 東京文化会館 4階 中会議室の“A” 住所:台東区上野公園5―45 電話 03―3828―2111 お気軽にご出席下さい。 ただし、理事各位、常任理事各位、その他役員は、電話でもかまいませんので、あらかじめ事務局 に出欠のご連絡をお願いいたします。 電 話 03-5215-5767
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会場内の様子
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