日本葬送文化学会 1月拡大幹事会・懇談会報告
2003年1月25日(土) 千代田万世会館 18時30分
テーマ「平成15年度(4月より)の活動テーマ」

出席者 順不同 敬称略
天野、浅香、野崎、溝落、三橋、木村、杉山、杉浦、勝山、大杉、二村、小口
(藤井、稲村)

テーマ「平成15年度(4月より)の活動テーマ」

事務局:来年度の複線的なテーマを『臨終行儀』を踏まえた日本的ターミナル・ケアの歴史、実態、問題点、将来的検証を行ないたいとのたたき台より、参加各位から、下記のような提言が寄せられた。

天野 :かねてから提案していた葬送習俗における『衣食住』をテーマにしてはどうか。またそれらに関する地域慣例など検証することが望まれる。葬儀に関係した言葉も同じ行いに対して、地方色がある。テーマ的には『衣食住からみた葬送文化』と云うことだ。

勝山 :世界的な葬祭環境の変化の中で傾向となっていることに、社会心理からみた葬送儀礼やその前段にある死また癒しの問題などが取り上げられるようになってきている。そのような状況で、日本の葬祭業界の取り組みは、きわめて形而上の面が強い。これらの反省から、テーマとしては、『新しい葬儀社、または葬祭業としての取り組み』を検証して、日本の葬送儀礼に対する周辺対応を検証したい。

杉山 :世相を反映して各種の事件事故などの例から、いわゆる自然死以外の死因傾向が増えている。これらは、世帯環境との連動もあり一般の人たちが日常的に直面することも多い。けれども、その取り扱いについては、検死状況など医学面のみならず、遺族に対する配慮など心理面においても、これと云ったケアがなされていないのが現状。そこで、『自然死以外の死の遭遇に対して、社会的な対応の問題点』などをテーマにしてみたい。なぜなら、そこを基点に葬祭と云う儀礼が派生するから。

溝落 :葬送に関しては、一般生活者の視点が置き去りにされている。現状の葬送儀礼、葬儀施工についてのクレームなどもそのような観点が原因のことも多い。葬祭ディレクター制度にしても、技能を中心とする技術志向で、そこには携るスタッフなどの資質が問われていない。また宗教界においても同じような問題点が重複して内包されている。これらの観点から、生活者視点から見た『葬送の変化とその現代的態様』を検証する必要があるのではないか。

杉浦 :同様に社会現象としての葬送の多様化、これは形式や進行のみならず、精神的な葬儀の受け止め方にしても、多種の多様化現象がみられる。学会としてはこれまでの葬送文化とすり合わせながら、『警鐘を打つべく切り口から現代社会の葬送の位置づけ』を考えてみたい。

小口 :それらを踏まえて、葬送の歴史や習俗の変遷から『近未来の葬送トレンド』を導き出すことが出来ないだろうか。

勝山 :自社のキャッチコピーとして、『不安を安心に!』と云う行いをさせている。そこにはその行いについての解説や説明が必要である。これがないままにことを進めるのが、サービスではないと考えるが、解説や説明の理解度に問題があるような気がする。

二村 :不安というのは、私も消費者サイドから多く耳にすることで、それは三つの要素が絡み合っていると思う。一つは初期対応に対する実務、心理面からの『不明』と云うことで、つまり最初にどう対応してよいのかわからない、ということだ。次に葬儀社の支払いに対する『不満』。そして、お布施や戒名に対する『不信』がからまって、不安を表出させているのが現代的な葬送施行に対する生活者の思いである。また、説明・解説に関しても、これまで日本人が持っていた『暗黙の了解』、『共通の意識』と云う基盤が崩壊しつつある中で、葬送文化を踏まえた上での霊魂観や死生観の日本人的認識、また基層文化に触れる感覚を啓発し、再認識させていく必要がせまられていると思う。

三橋 :生活者から見た葬送の意味や意義についてヒヤリングなどを、学会として実施することで、年代別、生活属性別などの観点から葬祭意識のサンプル抽出に取り組んでいくことも活動テーマになりうると思う。

野崎 :火葬場経営、あるいは寺院の観点から、特に檀家制度に関しても社会的な観念崩壊が見られる。それらの事例を情報として収集する必要があるように思う。

木村 :火葬場に関しても、まだまだその設置に際していろいろな問題がある。これらはあまり一般的な話題として取り上げられることは少ないが、自治体との関係における問題点や業務委託に関する実務的な問題も多いので、学会として検証しておく必要があるのではないか。特に火葬行政だけではなく葬送進行全般における政治とのからみなども、これまでの歴史上あったわけで、これらが現代的な社会病理の一因にも関係する面を指摘できると思う。

浅香 :葬送の文化は死から火葬場、埋葬までと非常に社会的に考えていかねばならない検証事項が多岐にわたってある。その中から学会としての『アンチ・テーゼ』を発していきたい。できれば、それを過去から未来へ時間軸を中心に、近未来に際して包括的に提言していきたい。

天野 :会員の葬祭実務関連者または企業に対して、実務的な自社業務、地域特性などに関するアンケート調査なども実施したい。それにより全国の葬祭文化における共通点や相違点が浮き彫りにされ、葬送文化を研究する人たちへのデータ提供が図れると思う。

・・・このように年間、月間、複線的、表出的な各種研究および活動に関するテーマが提言された。これらの提言を元に、3月理事会、4月定例総会における事業活動計画として懇談を重ね検討していく。