五 月 懇 談 会(日本葬送文化学会)

テーマ

「 病 院 と 葬 祭 企 業 」・・・パネルディスカッション           

                                                        於:千代田万世会館

                           日時:平成14年5月21日18:00〜

 

 今回は病院の霊安室を基点に、「死体」が「ご遺体」へと変容するその運用から、実務的な葬送儀礼への出発点として病院を見た場合、そこに参じる葬祭企業や遺体搬送などの関連企業がどのような位置づけで役割を果たしているかを、数名の実務経験者をパネラーとして出席者全員で懇談していく。

また、それぞれの立場から派生する「死」に対する思いを、どの様な形で業務に反映しているのか、また特に実務として霊安室の運用を行っている側の心理的な底流を懇談の中で表出していきたい。実務におけるいろいろな問題点を具体的に表出して実情を踏まえた将来的な投げかけが出来ればと思う。

「病院における死」の年間テーマから、死にまつわるハード志向・ソフト志向を交互に撚り併せていくことで、それがその後、繰り広げられるであろう各種の儀礼施行へ連鎖し、そこに社会環境や時代の風潮など、現代文明とすり合わせて成り立つ「葬送文化」をリアルに検証することが出来るのではないか。

 

パネラー

中央セレモニー 代表取締役 大杉実生 氏        (葬祭企業)

泣Aキラ    代表取締役 荒木由光 氏        (葬祭・霊柩企業:全霊柩理事)

日本寝台自動車 代表取締役 永野  勝 氏        (搬送専門企業)

                     (順不同)

 

意見交換

大杉:

都立病院の入札制度では、本来は葬儀社ではない業者が、名義貸しで入札にやってくることが多い。私立だと、某病院から、1300万円で入らないかといわれたことがある。霊安室のかぎを出入り業者が管理していて、他の業者が遺体を引き取りにきたとき、部屋を開けてもらうのに何時間も待たされることもある。葬儀社も悪いが、霊安室の管理や業者との癒着においては、病院も悪い。

荒木・

病院との汚い関係がイヤで、一切、病院には入っていない。最近では、エイズや肝炎などの遺体の場合のみ、仕事を依頼してくる葬儀社もいる。病院は業者にも、故人の病歴について教えるべき。千葉には霊安室のない病院も多い。一刻も早く引き払ってくれという態度がありありの病院も多い。

荒木・葬儀で***万以下の仕事はゴミだ。というような標語が会社に掲げられている葬祭業者がある。それには驚いた。

大杉

・都立病院は入札制度である。

荒木

・外国への搬送は日本でエンバーミングを施してからの方がベスト。外国に着きエンバーミングをしていないと入国できないこともある。博善社でもエンバーミングを行うが評判がよくない。というのも博善社は前に自社だけで青ナンバーの寝台車、霊柩車を確保し他者に認可させないような圧力を加え、なおかつ病院への営業は青ナンバーの車両ではないといけないというセールストークをしていたようである。全霊協の立場から見ているのでよく分かる。

荒木・成田近郊の霊安室のない病院は、患者の待合室の長いすをベット代わりにし、寝かせるそうだ。もっとすごい病院だと、病院の奥の倉庫のような物置部屋のようなところに安置していることもある。

荒木

・病院に入っている葬祭業者が葬儀を行い、もしも葬儀でクレームがついた場合、その病院側にご遺族はクレームをつけるという。それほど、葬祭業者と病院の癒着はすごいものである。

福田

・現在は病院からの紹介される葬祭業者といのは10%もない。ご遺族側で葬祭業者をすでに決められている。

**大の病院の電話は葬祭業者直通になっている。外には電話できず、無理やりでも葬祭業者につながってしまう。なんたるものか。

荒木

・ある病院の出入りの業者では、病院に出入りしているにもかかわらず他社に仕事が流れた場合などは始末書を書かせるという会社もある。なぜ流れて、どこの業者で、というように内容を詳しく書き、会社に報告するのだ。ちなみにこの会社が先ほどいった「***万以下の仕事はゴミだ。」の会社である。

何千万もの大金を出して病院をと契約しても、仕事(葬儀)までつながるケースが少なくなっている。よって病院対策費は軽減されてきている。しかし、まだ病院の各イベントには葬祭業者が助けている面が多い。(盆踊り、忘年会)

カトリックでは亡くなると「シュウイン」というのを行う。亡くなりそうになると、牧師さんがその場所へ行き軌道修正能力を発揮する。

大杉

・都立**病院で、ご遺族の方から互助会に加入しているということでその葬祭業者に電話したが互助会の対応が悪かったので、葬儀は依頼しなかったというケースがあった。電話一つの応対で、葬祭業者を選択する目安にするほど、ご遺族の心はデリケートになっている。しばらくしてその互助会が病院にきて「さきほどはすみません。どうか当社でやらせてください」というようなみじめな姿であった。しかし、その仕事は私の会社で施行した。

永野

・病院の霊安室など病院内で葬儀関係の話をするのはどうかと思う。ご遺族の心を思うなら病院を出てからすえきだ。例えば搬送中などは、ご遺族と自然に葬儀のことを話せると思うので、葬儀の話はやはり病院から出てからの方がよ いのでは。

永野

・搬送料金は、事前に金額を明記した方がよい。トラブルのもとである。事実、福岡までの搬送料を無料だと思ってたようで、その有料 無料の問題で裁判になったケースもあった。

飯田の場合の病院というのは、葬祭業者が入ることはない。あくまでもご遺族が決める。葬祭業者が病院側に何かをしたことが分かると、出入り禁止になることもある。

いろいろな情報を今はとれる時代なので、消費者が葬祭業者を選ぶ時代でもある。いいなりになってはいけない。

最後に総じてパネラーより一言

大杉

・悪者は葬儀社だけではなく、病院側も悪いと思う。良い葬祭業者を生前から知っておくというのも必要ではないか?

荒木

・退職された方々はこの業界にもう一度入る方、もう 二度とこの業界には携わらないという両極端な意見がある。

永野

・葬儀に費用を掛けないとう方向性があるが、メディアに消費者が動かされることがある。自分の考えをしっかり持つ必要があるのではないか。

 

 

   懇談中の様子