日本葬送文化学会 4月定例会
テーマ 「現代霊安室考」

    於:千代田区 万世会館 平成14年4月23日
講師:八木澤壯一 

共立女子大学人間生活研究室、前東京電気大学工学部建築科、名誉教授・工学博士、日本葬送文化学会 顧問                                

概要

病院はいまや殆どの人にとって、好むと好まざるにもかかわらず‘死’を迎える‘場’になった。その場が病室と霊安室である。この視点が現代日本の医療・福祉の中で欠落しているように思える。葬送の観点から病院と霊安室について、これまでの取り組みを中心に考えてみたい。

ースライド写真を見ながらの説明ー

スライド写真の施設

東京大学付属病院分院・東京女子医科大学病院・聖ロカ国際病院(旧)・慶応大学病院・倉敷中央病院・松任石川中央病院・東京駅・府中市斎場・戸塚火葬場・ウエルヘル二イミ・シュタインホーフ精神病院 以上

 

東京大学付属病院分院は外見の印象は白と緑のカラーで、内部は和室のような感じである。解剖室はイメージ的にはタイル張りで冷たく、寂しい感じだ。

東京女子医科大学病院の霊安室は近代的で小奇麗である。委託葬祭(病院と契約している葬祭業者)にコールがかかるように、霊安室の前のドアに電話番号などが掲げられていて、連絡が取れるようになっている。飾れている祭壇は神道でもあり仏式でもある。何よりも飾られているだけでも良い方だ。

慶応大学病院の霊安室jは外見はコンクリート壁で内部は金襴の祭壇が二段飾られている。骨箱がおいてあるのはなぜだろう。

和室と洋室の両方ある霊安室もある。

解剖するほど良い病院であるようだ。と言うのも、医師と遺族とのコミュニケーションがとえている証拠。

病院の内部で迷わないような工夫が施されている。(受付の横などに垂れ幕のようなものを垂らしたりして・・)

公立松任石川中央病院の霊安室は天井が白くドーム状で(半球)先端部分に穴が開いている。芸術的で、アートのようである。イメージ的には「光と空間の調和」というような感じだ。

東京駅にも倒れた方を休める場所もある。霊安室はレンガ(白)で出来ている。(東京駅らしい!?)少しだけ祭壇も置いてある。

府中市斎場の霊安室はモダンで綺麗である。最近の火葬場の霊安室はだんだんと良くなってきている。老人ホームの霊安室はホールに出てきていてみんなで、お別れできるようになってきている。

ヨーロッパの霊安室の場合はやはり基盤はキリストであるので、聖書やキャンドルなどがる。クリスタルの装飾などが施している。

ウィーンのシュタインホーフ精神病院は外壁は白い大理石をボルトで張り合わせたものである。上部の方の屋根は銅版で緑青でドーム状になっている。光をうまく取り入れ球形の天井は幻想的で綺麗である。礼拝堂のステンドガラスは大きくこれも光をうまく取り入れている。

質疑応答

今はいろいろなところで霊安室は綺麗になってきている。

骨箱を霊安室に置くのはそのまま売ってしまうことを意図としているのではないか。

故柩紙を書くように富山の事件依頼書くようにしている。

倉敷中央病院は市立であるが、立派な病院である。それは倉敷の街づくりに力を入れているため。

ウィーンの霊安室で葬儀まで行われるということは分かりません。ただやってもらえば遺族はうれしいのではないでしょうか。

火葬場で棺を入れた後、扉を閉め鍵をかけるが、それは、副葬品や貴金属などを取る者がいたためである。

霊安室から霊柩車がでることはなく、寝台車である。

病院では霊安室を使うようにしたほうが良い。

他多数あった・・   

                  以上  

 

 

 

 

 

配布された資料より

病院での「死」とその扱い

 病院における‘死’を受け止める場所の一つに霊安室がある。法律に基づいてその設置が義務付けられているが、その扱いについては、いくつかの危惧を抱いた。

 病院での死亡後の扱われ方を中心に調査に入ったことがある。その研究の取りまとめとして、それまでに得られた知見と私の考えをもとに、霊安室の在り方について提案として文章化した。さらにその内容を、医師、看護婦、病院管理者、葬祭業者、病院建築設計者、に評価をしてもらう、アンケートを求めてみた。

 内容は、霊安室の定義、病院の中での位置、告別の方法など、機能、管理や運営、施設設備の規模などである。それぞれについて、提案の適宜性、実行の可能性とその時期を評価し、予測を立ててもらった。その中からいくつかを紹介しておきたい。

 まず定義を「霊安室は医療の結果としての死を確認しあう場になる。従来の遺体を一時安置して遺族に引き渡すまでの場であるとともに、死に至るまでの医学的な見地から遺族、医師、看護婦などの間での話が行える」とした。提案の妥当性は、ほぼ望ましいものとして受け取ってもらえた。

 次にその位置を「病院の中で遺体を安置し、遺族が落ち着ける最良の場として院長室などの近くが妥当である」とする提案は、不要である。妥当性を欠き、実質は不可能であるとされた。しかし、「病院における死は最良の医療の結果としてとらえ、目立たないようにする配慮は必要でなくなる。従って地下や隅におくことは不適当である。」に対しては、改めて提案する必要はなく、妥当な面もあり、実行の可能性はある。と受け取られた。

 機能として「帰宅先での準備ができるまでの待機の場、解剖の待合の場となる」は、実績を反映しており、すでに実行中、が大半であった。しかし、「病院で新たな告別様式が作り出される」については、妥当性や可能性はややあるものの、重要性は低い、と判断された。

 遺体の搬出について「一般玄関から堂々と出す」は大反対を受け、「サービス通路で機材やゴミなどと一緒に出すことは避ける」は、すでに実行中との答が返ってきた。さらに「霊安室から自宅までの搬送業務は、専門業者に任せる」は、望ましいことだとし、すでに実行中が過半数超える。

 遺体は、病室から霊安室を経由せずストレートに運び出されるケースも多い現状で、その扱いが、さらりと、さりげなく、避けておこうという考えが強いように思えてならない。

                               以上